雨季たけなわのブラジリア。週末は飛行機格納庫で暮らしていますが、雨を逃れて、巨大なタランチュラが侵入してきやがった!
スリッパの半分ぐらいの、丸々太ったやつでした
ベッドにもぐりこまれて、あそこを嚙まれたら大変!なので、かわいそうだけど、ガソリンをかけたら、死んじゃいました。ちーん。
というわけで、楽しい田舎暮らしのひとこまでした。
さて本題。今回も野郎向けの気難しい記事ですが、素敵女子たちも、いいね!してね!
2023年1月1日、ルーラ氏が大統領に返り咲きしました。
ルーラ氏は、1945年、東北地方の貧しい農家に生まれ、学校もろくに通うことができず。靴みがきの少年、港の労働者、製鉄所での工員として苦労を重ねる中、労働運動にいそしみ。この過程で、大規模ストライキを扇動したりして、1980年には、ブタ箱に。35才にして前科者になってしまいましたが、まあ政治犯だから、幼女連続猟奇殺人犯とは違い、また麻薬犯罪組織の人たちとは関わり合いにならずに済んだらしい。
その後、3度出馬して3度落選しながらも、2002年に見事大統領に当選したのでした。
ルーラ大統領
ところで、ルーラは決してただの共産主義者ではなく。前任のフェルナンド・ヘンリッケ・カルドーゾ(FHC)による経済政策を受け継ぎ、そこは動かさなかったため、ルーラの第1期政権では、IMFに対する債権国になるなど、発展しました。
しかし、第2期政権以降ポピュリスト的傾向が頭をもたげ。「ボルサ・ファミリア(家族賃金)」という、日本での「ナマポ」みたいなのを創設するなど、せっかくFHCが必死になって均衡をもたらした財政に陰りが出てきてしまい。
貧困家庭への所得分配ならまだしも、ルーラ政権を継承したジルマ政権(2011~2016)では、「クリエティブな経理」「新たな経済マトリックス」など、要するに歯止めの効かない政府支出の増大に走ってしまい。
なぜ共産主義者は支出ばかり増やして、その支出を支える生産(企業)をないがしろにするのか?
このままでは経済崩壊だ!80年代からのハイパーインフレで恐ろしさを知り抜いている国民が、共産主義者だけは大統領にするな!とにかく誰でもいいから、ルーラのカムバックだけは阻むんだ!ということで、どこのだれかは知らないけれど、知らないということは汚職もしていないよねという、ボルソナロがSNSなどで若者の人気を集め、気が付いたら、ほにゃららーと大統領に当選していたのでした。
しかし、ジルマ政権からボルソナロ政権への移行には、ほにゃららにみえて、血みどろの
抗争がくりひろげられていた。
麻原彰晃やプーチンなど、いくら無辜の人々を殺しても狂信的な信徒がいるように、ルーラにも狂信的な信者がおり(ルーラ自身はそんな悪いやつじゃないけど)。
ルーラ氏とその信者じゃなかった支持者
https://lula.com.br/mais-de-400-juristas-lancam-manifesto-por-lula-livre/
ほっておくと、信者に担ぎ上げられて再選してしまうぞ!と常識ある知識人が恐怖していたところに、折よく「汚職とマネーロンダリング疑惑が浮かび上がり」見事禁固9年6か月の実刑でルーラをブタ箱にぶちこみ。右派大統領ボルソナロの誕生となりました。
一方、ルーラ擁護派は、この投獄や、時期を同じくしたジルマ大統領の弾劾罷免など「すべてファシストの策動だー!」としており。真実は神のみぞ知る、なのですが、ルーラやジルマも決してシロではなく、自業自得であったと思います。
ここまで読んだみなさん、猫機長はボルソナロ擁護派なの?と思われたかもしれませんが、ぼくとしては、だれが大統領かなんて実はどうでもよくて、そんなことより、せっかくFHCが、当時の社会的な犠牲の上に打ち立てた経済安定をぶち壊して、ベネズエラやアルゼンチンみたいにしてしまわないことを願っています。
要すれば、FHC当時のレアル・プラン(経済政策)で、財政支出の削減と管理、為替の安定による通貨価値の保全、金利政策に基づくインフレ制御という3本柱が成立したのに、ぶち壊すようなことをやるなということである。
財政支出の削減と管理、という言葉一つをとっても、響きは美しいけれど、それが貧困層にとって何を意味するのか。
もとから脆弱なブラジルの医療制度で、支出の削減が意味するのは、貧困地域での医療崩壊です。政府の補助に頼っていた貧困家庭では、医療が受けられなくなって悪化・死亡する人が続出。
こんな感じ
「銭ゲバ」より:https://www.sukima.me/bv/t/gomabooks0000167/v/1/s/1/p/15
ハイパーインフレからレアルプランの安定までには、国家レベルで社会的弱者の切り捨てが行われたということである。
遠いブラジルの話でピンとこないでしょうか?
第1次大戦後の恐慌によりドイツでナチが台頭し、ユダヤ人から財産を没収して、強制収容所で奴隷労働をさせた、という側面があるように、ブラジルでもハイパーインフレから新自由主義政策が台頭する段階で大量の失業者が出て、日本へデカセギの大移動が起きました。
ユダヤ人迫害は、ドイツ人らしいくそまじめさで、有無を言わさず「ユダヤ人認定」して、収容所送りにしたのに比べて、ブラジルの場合は、日本で外貨を稼げるぞ!と自ら「日系人認定(ビザ申請等)」して、自費で日本へ出てゆくよう仕向け。普通の日本人がやりたがらない3K労働で搾り取った挙句、給与はブラジルに流れるように。。。。という、どこまで狡猾なんだブラジル?という、一種ナチスも血の気が引くような行いでした。
日本側は、低賃金でなり手のいない労働に、そこそこ日本的な習慣にも慣れてくれる便利な労働力がきたー!と、悪意はなかったでしょうが。
一方、食うや食わずで働けば一財産築けるぞ!とそうはならずに工事現場で背骨を折ってゴキブリみたいに死んじゃったお兄ちゃんも多かっただろうけれど、ゴキブリより生命力が強ければ、ブラジルに帰ってまあまあ裕福になれた人も多く。
日本におけるブラジル人デカセギ労働者
https://www.japaoemfoco.com/o-que-e-ser-um-dekassegui-no-japao/
ホロコーストと違って「労働は人を自由にする(Arbeit Macht Frei)」が、一定の確率で望めた、という点は特記しておきます。
日本に残って日本人化した人も一定数おり、日本人もデカセギも同じ人間だよ!という実例が生まれて、ほっとしています。
日本人が犠牲になった例ではシベリア抑留があり。これは、日本政府がソ連に対し「いま大挙して帰ってこられても、みんな飢え死にだから、シベリアで養ってね!そのかわりどんなにこきつかってもいいからね!」とお願いしたといううわさがあり。
ハイパーインフレ時代のブラジルも、FHCに至って、「みんな飢え死に」にならないために、社会的弱者は病気になったら死んじまえ。日系人はデカセギで日本抑留になって、とっととブラジルに送金しろ、という血も涙もない切り捨ての結果「財政を抑制すれば、為替も安定し、インフレもコントロールできる」というところまで到達した。
その遺産を、ルーラ第2期からジルマ政権の代になって食いつぶそうとしたので、みんないたたまれなくなって共産主義者を政権から引きずり下ろした、というのがボルソナロ出現の実態でもあるのです。
さてボルソナロですが、失脚だの暗殺だのもなく、ほにゃららーと任期満了まで生き延び。共産政権にならないよう、もう一期継続を。。。と願ったのは、ぼくだけでなく、ブラジル国民のほとんど半数に達していたことが、決選投票で明らかになりました。
しかし、結果は、半数+僅差でルーラが勝利。
監獄からの、ゴキブリみたいじゃなかった不死鳥のような復活でした。
この辺に、ブラジルの病巣があらわになっていると思います。
レアルプランをもって経済が安定しても、いまだに、ブラジル国内で、医者にかかれずに死んでしまう人、工事現場でゴキブリのようにつぶされて死んでしまう人など、まだまだ生活苦にあえぎすぎている人々が多すぎ。これらの人たちが、一縷の望みを「ルーラのバラマキ」につないだ、という事実があるのだと思います。
サッカーとカーニバル。「パンとサーカス」。
しかし、バラマキの先に待っているのは経済崩壊と、ハイパーインフレの地獄。
ルーラが再選されるほど貧困の深刻なブラジルは、格差の是正が必須になっていますが、具体的な解決策は難しいし、これだよ!なんて安易に提示する奴がいたら、詐欺師だと思います。
シンギュラリティなどによるAIの発達で、ベーシックインカムが可能になれば。。。と個人的に思っています。
それまでは、一人一人が、自分自身のベーシックインカムを構築することだと思います。ブラジルの若者たちにも、リテラシーのあるやつも出はじめている、ということを信じたいと思っています。
ARBEIT MACHT FREI | Il portico dipinto
ではでは。。。
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